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■フォレストヒルレコーズ 松下隆二CD 準特選盤!

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弊社レーベルより発売中のCD、松下隆二演奏「さくらに寄せて」が、

今月号のレコード芸術誌で“準特選盤”をいただきましたっ!

長くなりますが、推薦して下さった濱田滋郎氏と、

準推薦の濱田三彦氏、録音評の神崎一雄氏の批評を掲載いたします。

濱田滋郎【推薦】

青年時代からコンクールなどの機会を通じてよく知っていただけに、いつまでも「若手」のような認識を捨てきれなかった松下隆二だが、1971年生まれだから、もう40歳になるわけである。これまでに映画音楽、ミュージカルなどの旋律をギター用に編曲したアルバムなど、二、三のCD録音があるが、このたびの『さくらに寄せて』は、円熟に向かおうとするこのギタリストが、伎倆と経験とを傾けての意欲作になっている。

CDタイトルからも容易に想像されるとおり、このギター・アルバムのテーマは「日本」、そしてさらに言えば、松下自身の解題にもそう述べられているように、彼の父親や先輩たちの時代、「昭和の日本」である。ただし、その舞台に登場する楽曲は十分に多彩で、たとえば、故・芳志戸幹雄のために三善晃が作曲したオリジナル・ギター曲《五つの詩》があるいっぽう、懐かしい歌謡曲《アカシアの雨がやむとき》の編曲もある。冒頭に置かれた青山政雄曲・松下編の《筑後子守歌》は情趣のある作品で、あるていどにせよ、CDの方向性を定める役割を持たされている。故・横尾幸弘の名作《さくら変奏曲》は、このようなディスクにとっては必須の曲目だが、松下の演奏は表現力にすぐれているばかりか十分に心を込めた秀演で、正当にハイライトを形づくると言えよう。世にありそうであまりない、ギター音楽におけるすぐれた高度なナショナリズムのアルバム。しかも紋切り型にならず真情を込め抜いた趣に打たれる。

濱田三彦【準推薦】

さきにはヴァイオリンの荒田和豊氏との『パッション・ダモーレ』なる1枚を発表したギタリスト松下隆二が、そのこまやかな芸をさらに広げ、深めたかのソロ・アルバムがこれである。そうした世界を創るとなれば当然自らの手になる楽譜、編曲譜が多くなるが、収録曲に寄せて、とした解説を読めばかかわり合うもろもろのこと、物、人への松下の愛情が伝わる。そこにある洒脱な文章をたとえ読まなくとも、多くもの静かなギターの響きとその音楽のたのしみ、味わうことが出来るというものだが、おだやか過ぎて眠くなる耳があるかも知れない。ライナー・ノーツを開きながら聴いた方が奏者松下の心がよりわかるだろう。彼が友人と呼ぶ超有名ギタリスト鈴木大介とのやりとりなど愉快なものもあれば、作曲家等に寄せた言葉もいい。クラシカル・ギター曲として、このアルバムの中でもっとも知られているのは横尾幸弘の《さくらの主題による変奏曲》であろうが、三善晃の《ギターのための五つの詩》や、三木稔/ブローウェルの《芽生え》など忘れてはならないものたちを入れたのも良かった。

友情のつながりから生まれた美しく、個性的なCDジャケットをはじめ、松下隆二という人の生活ぶりが見えるようなアルバム作りが感じられる。一方でギター教室の先生もしているという彼の一般的なギター曲の演奏も聴いてみたい気がする。

録音評:神崎一雄

間近で弾かれるギターを聴く趣と言おうか。ギターのサウンド・ホールを狙っての比較的オン・マイクによる収録を感じさせて印象的。クラシック・ギターのアコースティック感覚豊かな録音であるよりも、音場を広げずジャズ的なオン収録まっしぐらのギター・サウンドとも言えよう。オン収録ならではの弦の切れの良さと胴鳴りの迫力を堪能させる。〈90〉