6月7日の竹内竜次ギターリサイタルについての
「フォレストヒルニュース」は2ページ構成ですので、もう1ページご紹介します。
こちらは、演奏者の竹内氏から、皆様へのメッセージです。
会場は、室内楽専用ホールの「あいれふホール」です。
ご予約お待ち申しております!
以下
■竹内竜次から皆様へ■
稲垣稔先生がお亡くなりになったのは昨年の6月。
享年54歳という若さでした。
訃報を聞いて、なによりもまず頭に浮かんだのが、
「もうあの音色を聴けないのだ」ということです。
その喪失感は非常に大きなものでしたが、
今は、ギター史に名を刻む不世出のギタリストと同時代に生き、
その演奏を生で体感できた幸せをかみしめるようにしています。
稲垣先生の演奏の魅力を語りつくそうとすると、
一冊の本になってしまいそうですが、
「ギター好きの首根っこを捉まえて離さないギタリスト」の一言に尽きると思います。
私自身、初めて先生の演奏を間近で聴き、
「ディアハンターのテーマ」の美しさに、興奮と泣きたいような感情(つまり感動ですね)を体験して以来、
30年たった今も「首根っこを捉まれた」状態が続いています。
先生の演奏を聴く最後の機会になってしまったのが、
2008年九州ツアーの日向公演でしたが、
初めて先生の演奏を耳にした時の8歳の少年の心の震えみたいなものが、まざまざと蘇えってきて、
一瞬タイムスリップしたような、不思議な感覚に陥ったのを覚えています。
そんな感動にもう立ち会えないと思うと、
いまだに何ともやりきれない気持ちになってしまうのですが、、、。
さて、今回の追悼コンサートでは、
稲垣先生が最後の九州ツアーで演奏された曲や、
私の結婚式のお祝に演奏して頂いた曲、
そして初めて先生と共演させて頂いた曲など、
個人的にも思い入れの深い曲を中心にお聴き頂きたいと思っているのですが、
それとは別に大事にしょうと思ったことが2つあります。
生前、稲垣先生は「それが良く知られた映画音楽であっても、
演奏機会の少ない現代曲であろうとも、本当に自分が良いと思う曲を選ぶこと」を大事にされていました。
自分の心に率直であり続けることは、難しい事ですが、先生はそれを貫き通した方だと思います。
それから、先生のインタビュー記事で
「ギタリストである前に音楽家であれ。という人が多いですが、
僕は、音楽家である前にギタリストでありたいと思います。」
といった事を語られていたのを読んだ記憶があります。
私自身、ギターを弾く事の意味に迷った時、
稲垣先生の演奏を聴いて、この楽器を選んだことは間違いじゃない。
この楽器にしか出来ないことがあるんだなあ。と何度も勇気づけられました。
わざわざここに記するまでもなく、稲垣先生のような演奏は勿論出来ませんが、
僭越ながら先生が大事にされた二つの信念だけは心に刻み、コンサートに臨もうと思っています。
そんな訳で、コンサートを聴きに来て下さった皆様が、
もしひとつでもお気に入りの曲を見つけて頂けたなら、
そして少しでも「ギターっていいなあ」と思って頂けたなら、
それに勝る喜びはありません。
最後になりましたが、今回共演して下さる、尊敬する先輩ギタリスト・中野義久先生。
同門でもあり、同じく稲垣先生に首根っこを捉まれたギター小僧・溝口伸一君。
稲垣先生の素晴らしさを九州に広めて頂いたフォレストヒルの森岡社長。
そして今の私の土台を作って頂いた稲垣先生に心からの感謝を。
稲垣先生、先生の美しい音色と豊かで力強い音楽は、
私たちの心に深く深く根付き、それはずっと消えることはありません。
控えめな先生の事ですので「ときどき思い出してくれたらそれでええねんけどなあ」
とおっしゃるでしょうけど、、、。
竹内竜次